注目爆上がり!?(7014)名村造船所は今後も買われるのか?

個別分析

なぜ今名村造船所が人気急上昇!?

2022年8月20日時点の銘柄アクセスランキングで(7014)名村造船所が1位となっています。

今回はその理由を解説するとともに投資対象としてアリなのか?なしなのかを元機関投資家が分析の上、発表させていただきます。

【結論】名村造船所の分析結果

短期的な投資はありですが、長期的(2年以上)な投資はNGです!!

そのように判断した結果を以下に記載しますので、ぜひご確認ください。

会社概要

1911年創業で名村創業一族経営の造船準大手。本社は大阪市。2008年に函館どつく、14年に佐世保重工業をそれぞれ子会社化した。18年には自動車プレス子会社を売却し造船専業に。造船所は佐賀県伊万里と佐世保、北海道函館の3拠点体制。大型タンカーからばら積み船、小型タンカーまで幅広い船種を手がける。近年は船腹過剰や中韓勢との競合で大幅な赤字が続く。佐世保は22年1月で新造船を休止、約250人の希望退職を実施。今後は艦船などの修繕船で再建図る。

財務分析

■売上高の過去5年間の推移

■経常利益(損失)の過去5年間の推移

■当期純利益の過去5年間の推移

■キャッシュフロー計算書の過去5年間の推移

■総資産・現金同等物・純資産の過去5年間の推移

■その他経営指標等の過去5年間の推移

 決算年月 2018年3月期2019年3月期2020年3月期2021年3月期2022年3月期 前期比(pt)  単位 
 株主資本比率  –  – 
 株主資本利益率  –  – 
 1株当たり当期純利益 00000 –  .00  –   
 自己資本比率 38.842.640.235.929.8 -6.10  (%) 
 自己資本利益率 0.8 –  (%) 
 株価収益率 40.2 –  (倍) 
 配当性向  –  (%) 
※利益がマイナスのため、表記ができておりません。

■部門別収益

出典:業界地図

上記を見れば分かると思いますが、直近5年間は毎年営業利益・当期純利益ともにマイナス計上となっており、経営が危ぶまれる状況と言えます。また、利益剰余金もすでに枯渇していることから、企業の存続も怪しいと言って過言ではありません。

そのような企業がなぜ株式検索ランキングで1位と急激な上昇を見せているのでしょうか?

株価の動向

直近(2022年8月19日)の株価は年初来高値の748円となっています。

尚、年初来安値は2022年1月27日の184円となっており、4倍の成長を見せています。

出典:楽天証券

造船業界の動向は?

長く続いた船腹過剰が解消に向かうと思われた矢先、新型コロナに直面、業界の状況は依然厳しくなっています。各社は稼働維持のため採算度外視で受注せざるをえず、軒並み大幅な赤字に陥っているケースが多くなっています。 海外では巨大造船グループが誕生しており、中国では国営2社が統合、手厚い政府支援もあり、2020年に世界シェアトップとなりました。

韓国でも韓国造船海洋(現代重工業)と大宇造船海洋が合併に向け手続きを進めており、国内でも再編が進んだ。21年1月に今治造船とジャパン マリンユナイテッドの国内1・2位が資本業務提携、今後他社合流の観測も見られます。2月にはサノヤスホールディングスが造船事業から撤退、三井E&Sは商船で常石造船との資本提携、艦艇で三菱造船への譲渡を計画と、各社の再編が目まぐるしい数年となっています。

21年5月には海事産業強化法が成立、国も業界再編を後押ししています。ただ予算措置はわずかで「造船大国」復権の道のりは現状不可能と言えます。

造船業界は新造船の開発・製造、販売、修繕船を手がけています。国内最大手の今治造船をはじめとした地場系と、重工系に大別されます。受注時に船価が確定し、その後に資材費や労務費の高騰があっても、すべて造船メーカーが負担することから急激なインフレの損失が大きいです。中でも鋼材価格の影響が大きく、外航船はすべてドル建てで、円高も収益圧迫要因になる。受注時の採算がすべてであり、その後の環境変化によって巨額の損失が発生することも少なくない。手持ち工事量は2年分が適正と言われています。

2020年の国内造船は488隻、世界は5,822万総トンの造船が行われています。

競合他社の状況は?

■売上高ランキング

順位企業名売上高
1三菱重工業3.9兆円
2川崎重工業1.5兆円
3住友重機械工業9,439億円
4三井E&Sホールディングス5,793億円
5今治造船3,712億円

■売上高営業利益率ランキング

順位企業名売上高営業利益率
1住友重機械工業6.96
2阪神内燃機工業5.41
3中北製作所4.49
4ジャパンエンジンコーポレーション4.38
5三菱重工業4.15

■ROEランキング

順位企業名ROE
1三菱造船18.46%
2住友重機械工業8.5%
3ジャパンエンジンコーポレーション7.7%
4三菱重工業5.9%
5サノヤスオールでぃんふす4.7%

■自己資本比率ランキング

順位企業名自己資本比率
1自己資本比率82.4%
2阪神内燃機工業67.9%
3赤阪鐵工所67.8%
4今治造船59.15%
5新来島どっく58.28%

何故注目されているのか

上記の財務分析を見てもらえばわかると思いますが、名村造船所は万年赤字続きの会社です。しかし、8月5日公表の2023年3月期第1四半期(2022年4~6月)決算がサプライズ級の好成績だったことが材料となり、人気急上昇しています。

株価の動向を見てもらえばわかりますが、決算発御の週明けの8月8日・9日は2日連続でストップ高となり、8月12日は年初来高値となる735円を記録し、726円で引けました。。8月5日終値が442円だったので1週間で1.6倍にハネ上がった計算になります。ビットコインも到底及ばないボラティリティの上昇幅です。

どんな内容の決算発表だったのか?

8月5日公表の2023年3月期第1四半期(2022年4~6月)決算の中身はというと、売上高は前年同期比71.9%増の361億3300万円で、営業利益は78億0900万円の黒字(前年同期は58億7000万円の赤字)、純利益は95億6000万円の黒字(同54億8000万円の赤字)というものでした。

過去の業績は?

2017年3月期から直近の2022年3月期まで6期連続で営業赤字。しかも、2017年3月期が93億円、翌2018年3月期が194億円、2019年3月期41億円、2020年3月期160億円、2021年3月期104億円、そして2022年3月期が95億円と、巨額の赤字が続いておりました

これだけ赤字が続けば当然、利益剰余金は底を突き、2016年3月期末時点で668億円あった利益剰余金は、2021年3月期についにマイナスに転じ、2022年3月期末時点では121億円のマイナスになっていました。

そんな中の急激な黒字転換に市場は驚き、一気に買いが入ったということになります。

今後も注目されるのか?

上述の通り、いきなり注目されるきっかけになったのは決算発表の急激な黒字転換によるものです。

それでは、今後もこの黒字経営が続き、株価の上昇に期待ができるのかを考察していこうと思います。

黒字転換の要因は?

先ほどもお伝えした急激な黒字転換には理由があります。何故、営業損益が改善したのかというと、原価率が121.4%から74.5%へと急改善したことが主な要因となっています。

原価率が急激に改善した理由は、過年度に計上した工事損失引当金約80億円の戻し入れが発生し、それを原価で処理したからです。その結果、前期末に108億円あった工事損失引当金は、今期の第1四半期末時点で27億円に減りました。

会社側の今期業績の期初予想は、売上高が前期比37.9%増の1150億円ですが、営業損益は5億円の赤字です。前期から大幅に赤字幅は縮小する見込みですが、まだ赤字が残る計画で、第1四半期でこれだけ好発進しても、会社側は通期予想を引き上げていません。

今期の売上に記帳される新造船が低価格の時代に受注したものであるため、依然として赤字が続くシナリオのようです。

多くの場合、進捗が良いにも関わらず会社側が上方修正をしないと株価が下がります。しかし、第1四半期でここまで貯金ができれば、さすがに期初計画を大きく上回って着地するのではないか、と投資家が考えた結果が現在の急激な株価上昇という訳です。新造船の期初受注残も、前年同期比43.6%増の1541億円と潤沢となっていることから堅調な売上高を維持していくものと考えられることから、特段の工事損失などがなければ利益も黒字を維持できるのではないでしょうか。

しかし、造船業というジャンルは大きな成長も見込みにくく、海外勢力に圧倒されているため、良くても黒字転換止まりが予想されるため、長期的な投資は絶対にNGです。短期的な利益は見込めそうです。

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